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【コラム】〈ランドセル文化〉をゆるくする(前編)|福嶋 尚子

独特のランドセル文化

 隠れ教育費の中でとりわけ独特な位置づけなのが、ランドセルだ。

 ランドセルは、多くの場合、学校が「指定」しているわけではなく、「校則」で規定までされていることは多くない(ただしランドセル登校を「前提」にしている学校はかなり多い)

 しかし、日本に住んでいる人の多くが、小学校入学とランドセル購入とを自然と結びつける。生まれてから5年ほどしか経っていない子どもたちの多くも、その図式を内面化しており、ランドセルを背負う日を楽しみにしている。また、親戚や地域住民、その家庭とは関係のない人ですら、「小学校1年生なのにランドセルじゃないなんてかわいそう」と言葉や態度に出してしまうことすらある。

 その結果、「ランドセルでなくてもよい」ことがほとんどなのにもかかわらず、まるで〈準指定品〉のようにランドセルを扱うことが当たり前になっている。筆者自身の思い込みも含め、〈ランドセル文化〉は長年広く日本中に根付いている。これは、学校が指定し購入を求めている制服や指定品、教材とは全く異なる位置づけだ。

ランドセルのいいところ・悪いところ

 ただ、ランドセルについては昨今様々な議論もある。色や機能性が多様化する中で価格も高いものから安いものまで多様化している。しかし、実際に選ばれるランドセルは高額化の一途である(2023年度春の購入の平均価格は58,524円)。より好みに合うものを入手するためのランドセル購入(いわゆるラン活)は早くなるばかりだ(2023年度春のランドセルを購入した時期のピークは2022年5月、検討開始のピークは同4月)。

 他方で、ランドセルとその中身を合わせた重さが問題として取り沙汰され始めたのは2021年度だ。白土健先生(経営情報学)と髙野勇人先生(整形外科医)により「ランドセル症候群」として指摘されるようになったこの問題は、小さい身体の小学生が平均3.97kgにも及ぶ重さのランドセルを背負って毎日の通学をしており、通学が憂鬱になるだけではなく、身体にも悪影響が及んでいることを指す。

 彼らは小学1~3年生1,200名に対するアンケートを行ったうえで、その65.8%がランドセル症候群予備軍の可能性があることを社会に提起した。重いランドセル問題を解決しようと、子どもたち自身がランドセルを簡単に転がして歩くことができる「さんぽセル」を開発したニュースも2022年度当初にあった。

  四角いランドセルの形は、容量が大きく多くのものを持ち運びできるうえ、両手が空くために転んだ時のリスクが少ない。万一後ろにひっくり返りそうになっても、ランドセルがクッションとなり、地面に後頭部を直接に打ち付けにくくなる。一方で、そうした大容量であるがゆえに多くのものを入れることができてしまい、文部科学省も推奨している置き勉がなかなか進まないという側面もある。また、側面のフックに体操着袋や水筒をひっかけることでバランスを崩してしまい転ぶ子もいる。

 当たり前のことだが、ランドセルがいい、ランドセルを背負いたい、という子もいる。他方で、ランドセルでなくてもよい、むしろランドセルより他のかばんがいいという子もいるし、「手ぶらで学校に行けたら楽なのに――」と思う子もいる。ランドセルをどのように受け止めるか、その考え方は多様であって当然だ。

(チーフアナリスト 福嶋 尚子)

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