|第21回|保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。が更新されました!(2022.09.08)

【緊急提案】通学かばん・ランドセルの無償配布は自由化とセットで

 山口県防府市は、2023年春に小学校入学する全1年生に対して、軽くてコンパクトな通学用のかばんを支給することとした。市長が「少子化の中で子どもを増やすことも大切だが、何より生まれた子どもに健康に育ってほしい」と述べている通り、家庭の経済的負担だけではなく子どもの身体への負担を考慮している点が特徴である。昨年11月に話題になったように、小学生の多くが「ランドセル症候群」と呼ばれる心身の不調を感じているとされる。ランドセルよりも軽いかばんを現物支給することでこの問題を解消したいとの考えだ。なお、この記事では述べられていないが、これまで通りランドセルを使うことも可能である。つまり、無償配布と通学用かばんの自由化がセットで進められることになる。

 ランドセルの現物支給や購入補助についてはいくつかの自治体で先行事例がある。茨城県日立市では40年前からランドセルの無償支給を続けている埼玉県秩父市でも2023年度からランドセルの現物支給や購入補助の仕組み構築を目指している。秩父市の動きは、ランドセルの無償配布を公約に掲げた知事が2021年春に当選したことが、政策導入のきっかけとなった。市長は、「この事業はあくまで、さまざまな事情で苦しんでいる経済的弱者を救済することが目的。義務教育中は子どもたちに同じ境遇で、同じ物を共用し、同じ環境の中で学んでほしい」と述べ、子どもたちが同じものをもつ平等性を重視する。しかし、これには、「ランドセルに制限をかけるのは、児童や保護者らの選択肢を市が奪うことになるのでは」という多様性保障という視点からの反対の声もある。

 通学かばんとしてランドセルを無償配布することやランドセル購入費用を補助することは、4~8万円程度の家計負担を軽減する意味はある。ただ一方で、ランドセル症候群の問題をそのままに、子どもや家庭から通学かばんを選ぶ権利を奪う可能性がある。また同時に、自治体として新入生用のランドセルの現物すべてを買い上げた場合には、特定業者に公金を投入する独占状況を生み、ランドセルが実質的指定品に過ぎない現状を「名目も実質もランドセル指定」にしていくものともなりうる。「みんな一緒」の名のもとに子どもの心身の負担となりうるランドセルを、すべての子どもに「無償だから」と強制するのだろうか。※なお、ランドセルではなく特定の通学かばんを指定した場合も同様の問題は起こりうる(現在中学校普及している通学かばんを想起できる)。

 現状、実質的には指定品ではないにもかかわらず、ランドセルは高い。しかし、その経済的負担を軽くする一環でランドセルを指定品にしてしまうのはおかしい。ランドセルやそのほかの通学用かばんを無償配布したり購入補助をしたりする動きは歓迎したいが、それは通学用かばんの自由化とセットで考えられるべきである。そして、子どもたちが毎日持ち運ぶ教材・教具の見直し、通学距離や通学手段の検討も併せて行い、子どもたちが安全・元気に通学できる環境を目指したい。

(福嶋 尚子)

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◼️ 該当記事

「防府市 新年度予算案で新入学児童に通学かばんを支給」|NHK・2022年3月7日

「埼玉で初めての「ランドセル現物支給」で揺れる秩父市 支給か否か「そもそも今後ランドセルで通学ある?」 」埼玉新聞・2021年12月14日

「小学生の約6割が陥る「ランドセル症候群」、身体の痛みがあるケースも…」|マイナビ子育て・2021年11月8日

◼️ 関連記事

「ランドセル、家計に重荷 無料で配布の自治体も」|西日本新聞・2016年3月25日

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