【最新・第40回】補助教材費も無償にできるの?|保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。

教育実習生へのメッセージ!実習先で見るべきポイント・気を付けるべきポイント 

 これからのシーズン、多くの教育実習生が全国の学校に実習に向かうことでしょう。そこで、「隠れ教育費」研究室より、実習中に見るべきポイント、気を付けるべきポイントをお知らせします。おそらくほとんど全国の大学で、「こうしたポイントについてはあまり指導がなされていないのではないかな」(「隠れポイント」ですね!)と思う点について取り上げます。

見るべきポイント

① 教材・教具などの整備状況

 これは特に教科専門のある中高の免許取得を目指している人にとっては得意なところかもしれません。まずは、実習先の学校で整備されている自らの専門教科の教材・教具について、特別教室や準備室など、機会を頂いて見てみましょう。学習指導要領をしっかりと読んでから実習に行っているはずですので(え!?読んでないって人は今すぐ読みましょう)、「学習指導要領」に書かれているような授業をするのに必要な教材がきちんと整備されているか(教科による偏りはないか)。古くて使えないなんてことはないか、数は足りていないなんてことはないか……余裕があれば文部科学省が出している「教材整備指針」を見ていくと照らし合わせがしやすいですね(「学習指導要領」もずっと分量は少ないので、ハードルは低いはずです)。

 もちろん実習生は、こうした状況を見て、「全然教材が整備されていませんね。今すぐ整備してください」なんて言える立場ではありません。しかし、いかに学校の公費予算が厳しいか、また厳しい公費予算の中で教職員の方々が工夫して教材整備をしているかが垣間見えると思います。そうしたことを観察すること自体が教育条件整備に関わる目を肥やすことになります。また、授業計画はそれを支えるハードの側面の計画も重要である、ということが良くわかると思います(つまり教科の専門性をより高めることになります)。ないものは使えませんからね。

② 教材・教具などの持参状況

 公費で整備されている教材・教具だけではなく、児童生徒が持参・あるいはロッカーに保管している個人もちの教材についても、見せてもらう機会があるとよいですね(学校徴収金の内訳に関する書類なども見せてもらえるとラッキーですね)。それらの多くは、保護者が費用負担し、子ども一人一人が持っているものです。自分が学校に通ってた頃には個人持ちだったものが、まとめて学校に整備されていて、個人持ちでなくなっているかもしれません。それは、私費負担だったものが公費負担に変わっている例だと思います。例えば鍵盤ハーモニカ(別名メロディオン)などは、みな持ってきているのがばらばらで、唄口セットだけ購入して衛生的にも配慮して使われているかもしれません。これも「隠れ教育費」が軽減されている例ですね。こうした私費負担軽減策も非常に参考になると思います。

③ 制服・指定品などに関わる生活指導の様子

 もしチャンスがあれば、児童生徒の持っているランドセルやかばんの重さを体感するチャンスがあるといいですね。自分が学校に通ってた時から変わっていないでしょうか、それともとても軽くなっている、重くなっている、どちらでしょうか。いずれにしても、見直すべき点、あるいは受け継ぐべき点が見えてくると思います。

 また、とても暑い日、あるいは肌寒い日に、どのように児童生徒の健康を守る手立てがとられているかも見られるとよいですね。柔軟に対応している様子は非常に学びが大きいと思います。最近はコロナ対策もあり、衛生的にも配慮された様々な工夫が行われています。子どもたちの発達段階を踏まえた手立ても参考になりますね。

 さらに言えば、制服や指定品以外にも、学校の先生方は子どもたちの様子を観察する様々な工夫を行っています。朝の登校支援や朝の会での健康チェック、休み時間の過ごし方など、様々な時間で子ども理解を深めるための手立てをとっています。ぜひそうした先生方の姿も観察してみてください。

気を付けるべきポイント

 これは筆者が実習生を送り出すときに必ず言うようにしていることです。教育実習では実習生が授業を行いますね。その際、上で見たような整備されている教材・教具、児童生徒が持参・保管している教材・教具を活用するのは勿論良いことでぜひやってほしいです。しかし、実習生が案外やりがちな点として、「あまり意味のないプリントを大量に用意する」ということがあります。これは、しないように気をつけましょう。

 なぜしない方がいいかというと、まず通常の学校では印刷費(紙代、トナー代、マスター代)に代表される消耗品費が非常にお金がかかっています。中には保護者に紙代を請求している学校もあります。聞いたところの学校では、年間200万円ほどの公費予算のうち、印刷費用が5分の1の40万円近くを占めているところもあります。つまり、「プリントはお金がかかる」のです

 加えて、通常は学校にそれほど印刷機の台数がありません。印刷に慣れない実習生が印刷機を1時間占拠するだけで(試し刷りをせずにミスをしたまま大量印刷してしまう、何てことよくあります)、その他の必要な印刷ができず、残業になってしまう教職員も出てくるかもしれません。実習生一人くらい……と思うかもしれませんが、そんな実習生が複数人出ないとも限らないのです。

 今は小中学校ではギガスクール構想で配られたタブレットやパソコンなどがあるので、印刷せず、そうしたものを使っての配信などの方が教育効果が上がる例もありますね。高校でも、一人一台端末があるはずです。もう配られているもの、もう買ってしまっているものですので、ぜひ活用しましょう。「クラス全員でダウンロードしようとしたら、重くて動かなくなった!」「保管してたはずの端末が充電できていなかった!」それも含めて必要な経験です。デバイスだけではなくて、Wi-Fi環境、充電庫などの条件整備についても知るチャンスです。

 もちろん、筆者は、プリントは不要だ、使ってはいけない、という意味で言っているのではありません。印刷・配布するプリントは(タブレット配信するものももちろんです)十分に吟味して精査されたものである必要がある、ということです。例えば、やたらに余白があり無駄になっているだとか、教科書と同じことが書かれているだけであるとか、何を書くのかよくわからないプリントになっているとか、ノートに書くのかプリントに書くのかよくわからない授業計画・指示になっているだとか、(ノートに貼る、あるいはファイルに保管するなど)授業で使い終わった後にどうするかが十分に練られていないだとか、そういったプリントはいけません。そうそう、カラーコピーは高いです。なるべく控えましょうね。きちんと指導案とともに内容を十分に練って、指導担当の先生に提案しましょう。

 つまり、これを通じてプリントづくりの腕も上がるということですね。

 さあ、教育実習はやりがいと共に、心身共に大変に感じる人が多いです。事前にできる準備・教材研究を十分にして、よく睡眠をとって、体調を整えて、決して無理をせず臨んでほしいです。そして、日々学校で大変な職務を担っている教職員の皆さんに敬意をもって、授業以外の場面でも多くを学んでほしいです。それはきっと授業力にもつながります。皆さんの教育実習が充実したものになりますように。

(福嶋 尚子)

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