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【コラム】2024年秋・衆院選における「隠れ教育費」をめぐる政策|福嶋 尚子


 自民党総裁選が終わって間もないころに決定した2024年衆議院議員総選挙(10月15日公示、同27日投票)。2022年の参議院選挙に比べると全国的に物価高が進み国民生活が厳しくなる中、自治体の努力により給食費や教材費、修学旅行費の無償制度が展開するもとにおいて、果たして国政政党は教育費のあり方についてどのような姿勢で選挙に臨むのか。

 2022年夏の参院選に引き続き、今回のコラムでも、自由民主党、公明党、日本維新の会、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の各党の政策の中でも、小・中・高校の私費負担(広義の隠れ教育費)について、注目してみよう(以下の表を参照のこと)。

 なお、今回のコラムに先立ち、よりより教育条件整備を求めて長年活動している「ゆとりある教育を求め全国の教育条件を調べる会」(会長 山﨑洋介)が行った、主要政党に対する「2024総選挙公開質問状」の取組に、「隠れ教育費」研究室として賛同した。公開質問状の4つ目に、「④教育費無償を目指し、学校教育費私費負担(授業料、給食費等)を減らすために国の責任において取り組むことについて( 賛成 反対  その理由(200字以内))」という隠れ教育費に関わる項目を入れていただいていたからだ。今回はこの結果もあわせて一覧表に掲載していく(「調べる会質問状回答」の欄)。

 かつてないほどに「無償」という言葉が上がった2022年の参院選では、無償化の方法をめぐって大くくりに見て3つのパターンがある、と分析した。1つ目は、児童手当を充実させるなど家庭に対する現金支給を普遍化・充実させていくパターン、2つ目は、就学援助や高校の奨学給付金、児童扶養手当など経済的に厳しい(特にひとり親)家庭に対する現金支給を拡充させるパターン、3つ目は、教材費や給食費など現在私費負担であるものを無償化するパターンだ。このうち2つ目のパターンは変わらず残っているが、1つ目の児童手当拡充は2024年10月より児童手当の仕組みが改正されたことから、今回の公約・マニフェストでは少し主張が減っているようだ。国民民主党が3歳~18歳の第1子・第2子について15,000円への拡充、れいわ新選組が一律3万円への拡充をあげている。

 そして、ここ数年様々な自治体レベルで展開している無償政策であるが、調べる会の公開質問状では回答のあった7政党(自民党除く)すべてが「賛成」と回答していることから見ても、方向性としては一致しているといってよいように思う。しかし、詳細を見ていくとその対象などの重点は異なる。

 給食費は、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、れいわ新選組が無償を明言している。公明党は(文部科学省による)「実態調査の結果を受けて課題を整理し」というこども未来戦略の文言を繰り返しながら、「こども家庭庁、農林水産省、文部科学省等が連携して…〔略〕…自治体の取り組みを後押し」とし、国として無償を主導することについては消極的なように思われる。修学旅行費の無償を挙げるのは国民民主党、教材費の無償を挙げるのは、日本共産党である(調べる会質問状への回答では国民民主党も)。その他、学童保育の無償を挙げるれいわ新選組などの例もある。

 多方で、大阪府や東京都で私立学校も含めた「授業料無償化」が進行している高校段階については、国一律での就学支援金制度の見直し(所得制限撤廃・私立や朝鮮学校への拡充等)について公明党、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社民党が挙げている。通学費・教科書・タブレット代等、授業料以外の費用についても着目しているのは、自由民主党と日本共産党が挙げられる。

 「所得制限のない教育無償化と教育改革」を強く打ち出す日本維新の会は、具体的な内容が示されていない、とだけ指摘しておく。

 自由民主党公明党日本維新の会立憲民主党
教材費    
給食費   無償化
修学旅行費    
高校授業料以外支援拡充就学支援金の所得制限撤廃 就学支援金の所得制限撤廃
児童手当抜本的拡充   
その他  完全無償化の方針 
調べる会質問状回答未回答学校給食に関しては、実態調査の結果を受けて課題を整理し、こども家庭庁、農林水産省、文部科学省等が連携して、主食・おかず・ミルクのそろった完全給食の実施や、食育の充実、負担軽減など自治体の取り組みを後押し幼児教育から大学院まで全過程について完全無償化小中学校の給食の無償化、高校・専門学校大学の無償化

 国民民主党日本共産党社民党れいわ新選組
教材費 無償化  
給食費無償化無償化 無償化
修学旅行費無償化   
高校授業料の完全無償化私立高も公立校と同額補助。就学支援金の所得制限撤廃。教科書やタブレット、通学費無償。朝鮮学校にも授業料無償化適用朝鮮学校も無償化 
児童手当所得制限撤廃。月1.5万円に。  所得制限撤廃。月3万円に。
その他教育国債創設で5兆円規模の教育科学技術予算就学援助拡充。  
調べる会質問状回答③小中学校給食無料(地産地消や有機食材を推進) ⑫教材費や修学旅行費等無料私立高校の授業料無償化、義務教育での給食費無償など私費負担ゼロ高等教育までの授業料無償化、学校給食や学校教育費無償化18歳までの学校給食費、学費など「子ども支援5つの無償化」
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