第5回|教材費の私費負担を軽減する試み①
こちらの記事は、第4回|公的支出が減らされの続きです。あわせてお読みください。
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〜以下、書き起こし〜
第5回 教材費の私費負担を軽減する試み①
実は、教科書以外の教材を保護者負担で購入させ授業で用いる場合、学校は教育委員会に事前に届け出たり、承認を得たりする必要がある(地方教育行政法)。届け出られた教材は、保護者の経済的負担が過重なものになっていないかどうか、という視点からもチェックされる。つまり、授業で必要な教材を用いる自由を教師はもっているが、必要だからといって無制限に私費負担を課してはいけない、というのが法令の立場である。
また、そもそも学校にかかる費用は学校設置者(すなわち公立学校の場合は地方自治体)が負担すべきという理念が学校教育法には示されている。国や自治体の公費負担を拡充し、私費負担を軽減していくべきことは、戦後教育における変わらぬ理念なのである。
この理念に基づき、教材費の無償や公費負担拡充に取り組んでいる自治体もある。例えば、山梨県早川町は2012年度より「義務教育費の無償化」を謳い、教材費を含む義務教育にかかる費用を全て町が負担している(制服など私有となる物品購入費用除く)。福岡県古賀市は、数のおけいこセット、計算カードを市が購入・整備している。滋賀県高島市は、個人もち教材の精選や再利用、ドリルやワークのデータベース化(個人購入の廃止)、授業で使う材料費の公費負担化などに取り組んでいる。
教材費ではないが、コロナ禍によって安定して昼食を食べられなくなった子どもたちに対応するため、給食費の無償化や学校休業中でも就学援助費の支給に取り組んでいる自治体もある。小規模自治体では、こうした試みが行いやすいと言われている。しかし、2020年7月に行われた東京都知事選で、小学校からの教材費・給食費・制服代を無償化することを公約に掲げる候補がいた。惜しくも落選したが、東京都で教材費の無償化が実現すれば、全国各地に波及する可能性もあった。全国の自治体は、憲法上の義務教育の無償の実現に向けて、具体策を講じてほしい。
(福嶋 尚子)
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