【最新・第23回】なぜPTA会費を学校が集めるの?──PTAの疑問③|保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。

PTAによるエアコン設置——いったい何が問題?

 ある県立高校のPTAと同窓会が学校のエアコン設置費用を負担したことで、2022年度の優良PTA文部科学大臣表彰を受けたという。その費用負担の詳細を見て驚いた。

 「PTAは昨年、学校側からエアコン設置の打診を受け、同窓会と連携して設置費用1200万円余りを支援した。」(該当記事)

 なんと、1200万円という高額の寄付をPTAと同窓会とで行ったという。

 このPTAの仕組みが分からないので詳細については指摘できないが、市町村立の小中学校よりも都道府県立の高校において、エアコン設置を保護者やPTAの負担で行っている話は一般に良く聞く。それはなぜなのかということと、それの何が問題なのか、ということについて、ここでは整理したいと思う。「えっ?いい話だよね。何か問題があるの?」と思う方にぜひ読んでいただきたい

(文部科学省「公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況について」2022年度)

 学校におけるエアコン(空調設備)の導入は、学校における熱中症事故の悲劇等も受け、近年急速に進んできたことが文部科学省の調査結果からもわかる。普通教室では今年すでに95%を超え、特別教室でも6割、体育館でも15%で導入が行われている。しかし、この調査の都道府県ごとの状況を見ても一目でわかるとおり、都道府県によってその導入状況には大きな格差がある。端的に言って、エアコン導入に公費をかける自治体とそうではない自治体との間で格差が生じているのである。

◼️ 問題点①地方財政法への抵触の可能性

 そんな中で、子どもたちの学習環境を守るために「私費負担をしてでもエアコン導入を」という機運が高まる。しかし、そこには法的な問題が生じうる。

 市町村立の小中学校の場合、地方財政法27条の4に規定されている、「市町村が住民にその負担を転嫁してはならない経費」として、「市町村立の小学校、中学校及び義務教育学校の建物の維持及び修繕に要する経費」(地方財政法施行令52条)が挙げられていることが問題となる。エアコン導入の経費はともかく、その維持費(電気代)がここに該当しうるからだ。一方、都道府県立の高校であれば、この規定は該当しない。代わりに、「都道府県が住民にその負担を転嫁してはならない経費」として、「都道府県立の高等学校の施設の建設事業費」が挙げられている(地方財政法27条の3)。この「建設事業費」には当たらないとされることから、都道府県立の高校では住民(すなわち保護者やPTA)によってエアコン導入の費用や維持費が負担されやすい。

 しかし、もう一つ地方財政法上で禁止されている「直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む。)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む。)するようなこと」(割当的寄附金等の禁止。4条の5)に該当する可能性が、市町村立、都道府県立問わず残されている。つまり公立学校が主体となり、世帯当たり/生徒当たりの年額いくら/月額いくらというような形で金額を割り当てて寄付を募る行為は、間接であっても(同様の形で会費を徴収してそこから寄附金を出すような形であっても)禁止されている。PTA会費を経由しての寄付や一人当たりのエアコン代や冷房代の徴収がこの規定に抵触する可能性がある。

 実際、文部科学省は「PTA等学校関係団体が実施する事業に係る兼職兼業等の取扱い及び学校における会計処理の適正化についての点検・調査結果」(2007~2011年調べ。対象:高校、中等教育学校)で示されている通り、PTAによるエアコンの維持修繕について学校に必要な指導を行っている。

 

◼️ 問題点②隠れ教育費が肥大化する

 学校が直接に徴収する私費負担ではなくPTA等を経由する間接的な「寄付金」として学校にわたる費用は、見えにくい私費負担、つまり隠れ教育費となっていつの間にか肥大化する。統計上に反映されずに説明も十分にないままに負担額が増えることになり、また、表向きは真に任意の寄付金として募っていたとしても周囲からの同調圧力や受益者負担幻想の下では支払いを拒否するのは困難である。加えて、就学援助制度のない高校段階では、経済的に厳しい家庭にとって重い負担と感じられる可能性が高い。

※このような「間接的」な私費負担の形をとることにより、隠れ教育費が増えてしまう危険性についても、すでに当研究室のコラム「『PTAからの寄付』──安易な受け入れが『隠れ教育費』を深刻化させる──」(栁澤靖明)で指摘されている。

◼️ 問題点③PTAの存在意義と学校設置者の役割

 戦後初期にPTAが連合国軍や文部省によって設置が推奨された際には、学校を経済的に援助する後援会としての存在意義以外のものが模索されていた。それが端的に表れているのは、文部省による有名な「PTA参考規約(第二次)」(1954年)ではなく、その前身にあたる父母と教員の会「参考規約」(1948年)である。そこには、以下のように書かれている。——「本会は国及び地方公共団体の適正な教育予算の充実を期するために努力する」(8条)、「本会は学校の財政的維持および教員の給与並びに生活費に関して直接責任を負うものではない」(9条)——つまり、PTA自ら予算を負担するのではなく、国や地方に対して予算の確保充実を求めていくことがPTAの方針として明らかにされているのである。

 実際、PTA自らが資金を調達してくることになると、PTAの経済状況(すなわち会員世帯の経済状況)によって、子どもの学習環境に差が生じてしまう。同じ自治体の設置した学校であるにもかかわらず、である。だからこそ、PTAがなすべきことは、自ら資金を調達することではなく、どの学校に通っても子どもの学習権がじゅうぶんに等しく満たされるよう、働きかけることなのである。

 そしてまた、自治体のなすべきことはエアコン導入のために高額の寄付を集めた任意団体を表彰することではなく、学校教育法上に謳われた、学校の設置者が学校の経費を負担する義務(5条)をしっかりと果たしていくことである。もし自治体が単独でその役割を果たすことが難しい場合に、PTAなどとともに国に必要な措置・予算を確保することを求めていくことも重要だ。

※またPTAの教職員会員にとっては職場のエアコン導入費用に自腹を切っていることになる、という問題もある。

 今回、学校の行為の法への抵触の有無は、報じられている範囲では判断ができない。しかしながら、学校の設置者である自治体・教育行政が、学校の教育条件を整備するという役割を十分に果たしておらず、あろうことかそれを任意団体に頼って乗り切ったことだけは明らかである。

(チーフアナリスト 福嶋 尚子)

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◼️ 該当記事

高校にエアコンを…生徒の願いにPTAと同窓会が1200万円援助 文科大臣表彰受ける(南日本新聞) – Yahoo!ニュース

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公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況について(令和4年9月1日現在) (mext.go.jp)

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