|第21回|保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。が更新されました!(2022.09.08)

「PTAからの寄付」──安易な受け入れが「隠れ教育費」を深刻化させる──

 「さいたま市立小中学校・特別支援学校がPTAから寄付を受けた物品」その総額は「1億円超」──「市教委によると、19年度は印刷機や大型扇風機、体育館暗幕、発電機、給食用食器などの寄付を受け、合計額は計約6200万円」──隠れ教育費、その真骨頂である。

 数学ワーク(500円)漢字ドリル(300円)などという補助教材にかかる費用の負担は、物品購入の対価として保護者(費用負担者)にもその使途や意図がわかりやすいし、理解を得やすいと考える。しかし、PTAを経由することにより、それは一気に「隠れ教育費」=見えづらい私費負担へと加速するのだ。PTAという組織へ支払った費用=会費が知らず知らずのうちに学校の「印刷機や大型扇風機、体育館暗幕」などを購入するための費用──「寄付」の一部に変わる

 そして、その「寄付」行為に対する会員の承認はほとんどの場合、事後となる。それは、承認を判断する段階ではなく、報告されたことを追認するしかない場合が多い。会員にとっては意図していないし、想定されていないPTA会費の使途となっていることもあるだろう。

 PTA役員側としても、その都度PTA臨時総会を開いて「寄付」に対する決議をすることはあまり聞かない。PTA会長を含めた役員数人の意見で実行されることが多いように思える。しかし、その検討内容は〈執行可能なお金があるか〉が中心であり、物品それ自体に関しては〈学校からの要望が100%〉で決まり、そしてこの行為が〈「地方財政法」に抵触するかどうか〉を検証することまでは難しいだろう。

 さいたま市、教育長の発言「ほぼすべてが公費でまかなわれるべきものだった」──。それは、関係者ならだれもが思っていること(……だろう、と信じたい)。それでもなお「PTAからの寄付」があとを絶たない理由は、以前ここでも述べた高松市の「学校徴収金等取扱マニュアル(試行版)」制定の背景にある考え方と重なる。行きつくところは「より良い教育環境を望むPTA等の考えにより、学校教育の充実・発展のために善意・自発的な申し出がある場合」のPTAからの寄付を認めていることが問題の根源なのだ。

 そのときの記事で「①『より良い教育環境』を望まない、②『学校教育の充実・発展』を否定する、このような考えをもったPTA等は存在するのだろうか。③『善意・自発的な申し出』をだれがどこで発議するのか、おそらく学校からの要望にこたえるかたちが多くなるのではないだろうか」という仮説を提起した。これはPTA側の考えだが、学校側も設置者である自治体を頼るより、〈PTAの善意〉に頼ったほうが実現するという雰囲気が蔓延っているのが現状であろう。

 さまざまな自治体で「PTAからの寄付」が問題視されてきた──問題を明るみにして終わりではない。さいたま市では、これらの物品に対して「本来学校で用意するべき物品」は受け入れらないと定めているそうだ。それにもかかわらず年間5,500万円もの寄付を安易に受け入れてしまう体制にメスを入れていく必要がある。また、学校も決して裕福な予算があるとはいえない状況である。それは承知の上だが、安易な「PTAからの寄付」を容認していくことで、深刻な「隠れ教育費」を生み出してしまう。このことを再確認する意味でも、さいたま市議会が明らかにしたことには一定の意義がある。

 全国の都道府県・市町村議会でもこの問題を議論していき、「隠れ教育費」を少しずつ「現れ教育費」へしていくことが問題解決への漸進となるだろう。

(チーフディレクター・栁澤靖明)

◼️ 引用参考文献

印刷機、扇風機、暗幕…PTAからの寄付「公費でまかなわれるべき」 最終アクセス2022.06.09

印刷機、扇風機、暗幕…PTAからの寄付「公費でまかなわれるべき」:朝日新聞デジタル
 さいたま市立小中学校・特別支援学校がPTAから寄付を受けた物品について、細田真由美教育長は7日の市議会本会議で、2019、20年度分は「ほぼすべてが公費でまかなわれるべきものだった」と述べた。市教委…

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