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【コラム】「『# 給食費無償化』全国へ」の実現、その先に自治体業務の負担増はあるのか?|栁澤 靖明

■「『# 給食費無償化』全国へ」の実現、その先に自治体業務の負担増はあるのか?

 学校給食費の無償化は、保護者側のメリットとして費用負担=支払いがなくなる(月々約5,000円∴年間55,000円程度にもなる給食費が無償)。そして、学校側のメリットとして業務負担=保護者からの費用徴収や未納対応がなくなる。このように給食費の無償化は、保護者にとっても学校にとってもWin-Winな政策となる。しかし、学校給食を実施していくためには、その両者だけでなく実施者=自治体≒教育委員会(事務局)も重要な立場にあるといえる。無償化が実現すると、保護者や学校の負担はなくなるが、自治体の負担は増える──というウワサを耳にすることがあった。本稿ではその点について整理し、説明していく。

 まず、学校給食の費用面について改めてその現状を整理しておこう。

徴収:学校側の業務として徴収や未納対応をあげたが、それを自治体が担っている場合もあり、このことを「公会計」と呼ぶ(文科省調査では、全国の自治体中31.3%しか公会計化は進んでいない)。そして、それを学校が担っている場合は「私会計」と呼ぶ。私会計から公会計へ移行する場合、学校の業務がそのまま自治体の業務へと移行する。このことにより、自治体としての負担は増える。しかし、新たな業務が増えるとなれば事務職員の増加を見込める。ある自治体では、公会計化と同時に給食費徴収を専門とする係長+数人の事務職員が増員され、新たな組織を編成した。このように負担は増えるがひとも増えるとなればイーブンだろう。

支払:食材料納入業者への支払い業務である。給食調理室がある学校(自校調理)の場合かつ独自献立、そして私会計の場合、学校から直接業者へ支払うこともあるが、自治体内同一献立の場合は自校調理校でも教育委員会(事務局)を経由して支払うことが多い。公会計の場合は、当然だが教育委員会(事務局)が支払いを担当する。

 さて、無償化が実現した場合はどうなるか。

 徴収の行為そのものがなくなるため、私会計から公会計へ移行するが、前述したような業務負担が増えることはない。「ウワサ」に聞く〈負担増〉は、無償化ではなく公会計化のことを指している可能性もある。そのため、冒頭で示したWin-Winに自治体のWinを加えることができ、負担増が生じるとはいえない。それでは、具体的に給食費の確保と支払い業務をみていこう。

給食費を保護者から徴収することはなくなるが、食材料費の支払いは必要である。その費用を受益者負担ではなく、設置者負担(=税金)で支払うために、自治体の当初予算に組み込む作業が必要になる。大まかに説明すれば「子どもの人数×条例等で決まっている単価=必要な予算」という基礎で算出する。その金額を一般会計でも特別会計でも、給食費としてセットし、議会を通過すれば徴収した費用と同様、それが支払いにあてる予算として確保されたことになる。公会計化のみへの移行と比較すれば、負担の違いは明白だろう。

 支払い行為は自治体の業務となる。いままで学校現場に支払い業務を委ねていた自治体の負担は増えるかもしれない。しかし、自治体ではそもそもどんな種類の予算を執行するときでも地方自治法に定められた決裁を通す必要がある。たとえば、会計制度が私会計でも公会計でも、給食費が有償でも無償でも、給食調理室の電気代やガス代、水道代は公会計により設置者負担(=税金)で支払われている。そのため、現状でも学校給食を実施している自治体ならどこでも支払い行為(=決裁)はされている。無償化された場合、それに加えて「食材料費」の決裁が増えるだけともいえる。もちろん、食材料納入業者が多ければ多いほどその作業は増えるが、前述したように多くの場合は現在も自治体が負担している作業であり、新たに負担が増えるとは考えにくい。

 まとめると給食費を無償化した場合──保護者は完全に負担がゼロとなり、学校に残る行為として、喫食数の報告と調整(〇〇学校:□月□日に××食が必要)のみとなる。そして、自治体の業務負担も公会計化に留まるより無償化を実現させたほうが断然少なくなると考えられる。

(チーフディレクター・栁澤靖明)

◼️ 引用参考文献

文部科学省ウェブサイト「令和3年度学校給食費に係る公会計化等の推進状況調査の結果について(令和4年12月23日)」

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