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【コラム】「学校給食無償化法案」を読む|福嶋 尚子

 立憲民主党・日本維新の会が、2023年3月29日午後、「学校給食無償化法案」を共同で衆議院に提出したとの速報が入った。両党はこれまでも給食を中心とした学校にかかる経費についての無償化や補助を政策として提案してきている。学校給食無償の取組が自治体で急拡大し、与党も学校給食無償について検討することが報じられた中で、さらにこれを実現させるためについに法案提出に至ったものと記者会見では説明されている。これは学校給食無償に向けての大きな一歩になるだろうし、ぜひそうしていきたい。

 法案をさっそく読んでみる。

 報道では「学校給食無償化法案」とわかりやすく呼ばれているが、新法の制定をするのではなく、学校給食法等関連法の一部を改正すること法案の内容だ。

 大きな改正点は、「学校給食法の一部を改正する法律案要綱」では以下のようにまとめられている。

「一 経費の支弁及び負担 

1 学校給食に要する経費は、義務教育諸学校の設置者の支弁とすること。 

2 国は、義務教育諸学校の設置者が支弁する学校給食費のうち、学校給食費の額の標準となるべき額として政令で定める額を基礎として政令で定めるところにより算定した額に相当する額を負担するものとし、当該設置者に対し、国が負担する額を交付すること。 

3 特別の事情があるときは、義務教育諸学校の設置者は、学校給食費の額から2の政令で定めるところにより算定した額を控除して得た額を限度として、学校給食を受ける児童又は生徒の保護者に負担させることができること。(新第11条関係)」

 つまり、これまであったような給食実施のための施設・設備費や運営に要する経費と、「学校給食費」(つまり食材料費)という区分を一旦なくし、これらをすべて設置者の「支弁」(金銭を支払うこと)とする(第11条第1項)。

 しかし、そのうち、「学校給食費の額の標準となるべき額」を政令で定め、それに相当する額を国が「負担」(義務・責任を引き受けること)する(第11条第2項)。

 ただし「特別な事情」があれば「学校給食費」の額から2項で国が負担する額を「控除」(一定の金額を差し引く)して得た額を限度として、保護者に「負担」させることができる(第11条第3項)。

 どうやら、給食実施のための施設・設備費や運営に要する経費を含む「学校給食に要する経費」という大きな概念の中に、食材料費にあたる「学校給食費」が含まれているという発想をとっている。このこと自体は現行の学校給食法の概念に準じるものだろう。そしてその「学校給食費」の部分について標準となる額を政令で定め、その額を「国」(すなわちここでは文部科学省と見られる)の負担とし、補助金あるいは負担金のような形で設置者に交付する。国負担による食材料費の無償化構想だ。これを「令和6年4月1日」(附則第1条)から施行させるとなると、現状最短コースでの全国一律無償化構想と言えるだろう。

 なお、これらは公立の義務教育諸学校に適応されるもので、国立及び私立の義務教育諸学校については、「当分の間」学校給食費は保護者負担とされている(新第13条)。ただし、「政府」(すなわち内閣)は法の趣旨を踏まえて、国立・私立の保護者の経済的負担を軽減する方策を検討・措置することとされている(附則第5条)。国立・私立でも学校給食費の負担軽減・無償を行う道を残している

 この構想の趣旨自体は賛同できるものである。ただし、懸念もある。今後、よりこの構想がブラッシュアップされていくためにもここで指摘しておきたい。

1 学校給食の実施義務について

 学校給食法第4条に規定された、学校給食実施にかかる設置者の「努めなければならない」との努力義務規定がそのままとなっていることだ。すでに文部科学省の調査で、全国の国公私立の中学校で完全給食の実施率が89.1%にとどまっていることが明らかとなっている(「令和3年度学校給食実施状況等調査」2023年1月27日)。残り1割の中学校でもなんとか完全給食を進めるために、学校給食の実施を設置者の「義務」とすべきではないか。

2 学校給食費の負担について

 法案の第11条第3項では、国負担部分を超える学校給食費を保護者負担とすることが可能となっていることだ。政令で定めた標準額を超える部分ということは、その自治体や地域ならではの食材の利用やオーガニックや低農薬野菜の使用、「ご当地料理」の提供などの独自性を確保するために標準を超えた額が想定されていると思われる。こうした、その地域の農業振興や食育推進の視点を踏まえ、さらに法案第11条第1項の趣旨を踏まえれば、ここは保護者負担とすることを可能するとするべきではなく、あくまで設置者支弁とする方が筋が通るのではないか。

 国負担を基本としつつ、その自治体で上積みを可能とすることで、現在の地域性豊かな学校給食を維持することができる。

3 国立・私立の学校給食費について

 国立・私立の学校給食費について「当分の間」保護者負担としているが、無償化に向けての目途を立ててはどうか。小学校・中学校・義務教育学校における在学者数(対公立学校との比率)は、115,921人(1.9%)、273,492人(9.3%)、4,010人(6.3%)である(文部科学省「令和4年度学校基本調査」2022年12月21日)。ここに中等教育学校の前期課程や特別支援学校の初等部中等部の在学者を足しても人数はそこまで多くはない。「当分の間」ではなく「法改正3年後」などにさらに法改正を視野に入れることも可能ではないか。

 他にも、給食指導や食育にあたっている教職員分の給食費無償(現物給付)や、高校での学校給食実施の拡大、「学校給食実施基準」(学校給食法第8条)の水準の維持向上、給食提供に関わる教職員の労働の安定化・適正化等、欲張りたいことは多くあるが、最低限、上記の3点はすぐにも検討できるのではないだろうか。

 党派を超えた議論の拡大に期待したい。

◾️ 該当記事

公立小中学校の学校給食無償化の実現に向け衆院に法案提出 – 立憲民主党 (cdp-japan.jp)

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コメント

  1. 匿名希望 より:

    国立・私立の学校給食費は無償化する必要ないです。
    なぜなら、自分自身の選択で国立や私立にいくからです。
    学校給食費を無償化したいなら公立に行けばいい話。
    義務教育なのだから全員希望すれば公立にいけるんですよ。
    希望しても公立にいける保証がない高校授業料無償化とは違うわけです。
    非常に不愉快な記事です。

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