【最新・第40回】補助教材費も無償にできるの?|保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。

2022年夏・参院選における「隠れ教育費」をめぐる政策

 6月22日公示、7月10日投票の2022年参議院議員総選挙に向けて、各党の公約・政策が明らかになった。このコラムでは、自由民主党、公明党、日本維新の会、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の各党の政策の中でも、小・中・高校の私費負担(広義の隠れ教育費)について、注目してみよう(以下の表を参照のこと)。

 かつてこれほどに「教育費の無償」という言葉が上がった選挙戦があっただろうか、という驚きが第一にあった。自民党を除く全政党が、教育費の無償を掲げている。しかし、そこにおいては無償化の方法をめぐって大くくりに見て3つのパターンがある。

 一つ目は、家庭に対する現金支給を普遍化・充実させていくパターンだ。児童手当を充実させる立憲民主党やれいわ新選組などがその典型である。

 二つ目は、経済的に厳しい家庭に対する現金支給を拡充させるパターンである。就学援助や高校の奨学給付金などの制度で支給額を増額させるとする公明党や共産党、児童扶養手当の増額と対象世帯の拡充を上げる立憲民主党がこれにあたる。

 三つ目は、教材費や給食費など現在私費負担であるものを無償化するパターンだ。維新の会の給食費・デジタル教科書の無償や、共産党の教材費・給食費無償がこれに当てはまる。

 一つ目と二つ目は家庭に現金を支給する点で共通しているが、現金支給の場合、それが子どもの教育費に充てられるか否かが不確かとなる。また、家庭が学校徴収金を支払ったり現物持参品を購入したりする手続きが存在し、その手続きの際にタイミングよく現金支給がなされていなければ、家庭は一旦立て替えるという負担を負うこととなる。

 加えて、二つ目は、ギリギリ支給対象となることができなかった層については恩恵がなく、また、選別のための事務コストもかかる。本来支給対象となるべき家庭が漏れることもある

 三つ目は、具体的な無償の実現方法については言及がないものの、学校に公費を投入することで私費負担していたものを公費負担に変えていくという方法と考えられる。これにより、教材や給食が確実にその学校に通うすべての子どもたちに届く、という点で確実性が高い。筆者としては、三つ目の公費増額に伴う私費負担の解消を基軸にしつつ、無償の対象として現在挙がっていない制服類や修学旅行費用については一つ目や二つ目の現金支給の充実によりカバーしていく方向性が理想的であると考えている。

 以上のような形で公費保障を増やし家庭への現金支給を増額していけば、OECD加盟国中最低と言われるGDPに占める教育予算の割合も向上していくだろう。社民党の目指す「5%」も現実味を帯びてくる。ただ、必要な予算を積み上げていく動きと同時に、不要な経費を減らしていく、より目的に沿った支給・負担の方法に適正化していくことによって、現状の私費負担をそのまま公費負担に転換するよりも国・自治体の負担額は軽くなる。現状の肥大化した隠れ教育費を精査し、本当に必要な部分は公費保障に変えていく(すなわち無償)ことが重要と考える

 最後に、日本維新の会の幼児教育から高等教育までの無償化を憲法上の原則とする政策について述べておく。現行の日本国憲法26条2項後段の「義務教育は、これを無償とする」という条文については、義務教育段階以外の学校種について無償にすることを禁じているわけではない。現行の条文を立憲主義的に解釈することで、このままでも幼児教育や後期中等教育・高等教育の無償化は可能であり何ら妨げにはなっていない。むしろ子どもの権利条約や社会権規約を批准しているわが国では、これらの条約における中等教育の(漸進的)無償化に関わる条項がすでに効力をもっており、無償教育の実現に進んでいくべき根拠は十分に存在する。現行の条文でも十分可能な教育の無償化を、改憲への呼び水とするべきではない

(チーフアナリスト 福嶋 尚子)

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教員の働き方、学びの支援、子育て財源… 参院選各党公約出そろう | 教育新聞 (kyobun.co.jp)

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