この記事は、コラム| 「学校徴収金等取扱マニュアル(試行版)」(高松市教育委員会)を読んで──【前編】の続編です。まだ前編を読んでいない方は、こちらもあわせてお読みください。
◼️「学校徴収金等取扱マニュアル(試行版)」(高松市教育委員会)を読んで──【後編】
香川県高松市が制定した「学校徴収金等取扱マニュアル(試行版)」の特徴ともいえる「PTA等から支援を受けることが可能な経費」について考えてみよう。
まず、前編の冒頭で整理したマニュアル策定の理由を再掲する。
第一に「公費・私費の負担区分があいまい」なこと。
第二に「学校徴収金の管理・取扱等に関する統一的なルールがない」こと。
──「あいまい」から脱却し、「統一的なルール」で運用するためのマニュアル──それにもかかわらず、「PTA等から支援を受けることが可能な経費」の説明は複雑である。
こちらも再掲しておくと、「より良い教育環境を望むPTA等の考えにより、学校教育の充実・発展のために善意・自発的な申し出がある場合」で、法令に違反しないという条件がつく……。その法令とは、地方財政法施行令(第52条)で禁止されている人件費や建物の維持修繕費をあげている(個人的には、それに加えて「自発的」という定めもあるし、地方財政法(第4条の5)で禁止されている割当的寄附金等の問題もクリアしている、と書いていいと思う)。
そこでだ。「PTA等」とあるため、団体からの寄付行為を前提としていることが考えられる。そのことへの懸念をいくつかあげておこう。
①「より良い教育環境」を望まない、②「学校教育の充実・発展」を否定する、このような考えをもったPTA等は存在するのだろうか。
③「善意・自発的な申し出」をだれがどこで発議するのか、おそらく学校からの要望にこたえるかたちが多くなるのではないだろうか。
このように整理してしまうと、一見複雑にみえた「より良い教育環境を望むPTA等の考えにより、学校教育の充実・発展のために善意・自発的な申し出がある場合」という説明が、たしかに「あいまい」から脱却し、「統一的なルール」の策定に貢献している──とも考えられなくもないのだが……。
具体的にどのようなものが「PTA等から支援を受けることが可能な経費」に該当するのか、表1「教育活動に係る経費」(p.4)の部分をみていこう。目立つのは「拡大印刷機」や「カラーコピー機」、「多機能高速印刷機」である。価格にして何十万円もする高額な備品が含まれている。また、「児童会・生徒会、部活動など授業以外に使用するもの」も含まれている。
しかし、これらは基本的に「公費負担とすべき経費」にも書かれている事項だ。整理すれば、コピー機の購入は〈公費〉だが、カラーコピー機という「カラー」=「より良い教育環境」を望み「学校教育の充実・発展」を「善意・自発的」にPTA等が申し出た場合は、PTA負担すなわち〈私費〉としてもよいということになる。また、「より良い」≒「より円滑」な入学式や卒業式をするために「体育館用シート」や「スポットクーラー」を〈私費〉としてもよいとされている。
ここまでの部分を結論づけるなら、「慣習」としてPTA等から受けていた支援を「明確」な手続きを経るようにしたこと、それが「成果」となるのかもしれない。このあたりを市民はどのように捉えるのか──、引き続き「市長への提言」を観察したい。
次に、「学校徴収金の取り扱いに関する考え方」(p.6)をみていこう。
学校徴収金の取り扱いとして、「年間計画の策定」を義務づけている部分や「保護者負担の軽減」に努めることを重要視していること、さらに「執行状況」の情報提供や保護者会などを利用して「意見の把握に努める」という大事なポイントがしっかり書かれている。
さらに、続く「会計処理の基本的な考え方」(pp.7-9)の内容も盛り込みながら、必要事項を抽出していき、マニュアルよりも上位規範である(マニュアルの遂行をより強い位置から監督する)「学校徴収金取扱要綱」などを策定するとよい。
教育委員会で、事務局が説明に使用した資料「学校徴収金等取扱(試行版)の策定について」では、2022(令和04)年に「試験的運用」し、「マニュアルの見直し」を経て「より実効性のある『学校徴収金等取扱マニュアル』として策定」されていくというフローで締めくくられている。
すべての子どもに教育を受ける権利が保障されるためのマニュアルへ進化することを切に願う。
(栁澤 靖明)
◼️ 引用参考文献
・高松市ウェブサイト「令和4年 高松市教育委員会1月定例会の開催結果について」(最終アクセス 2022.02.14)
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