【最新・第40回】補助教材費も無償にできるの?|保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。

【シリーズ|その2】教職員の「自腹」調査結果から見えてくるもの

その2・「教職員の自己負担に関するアンケート」の結果概要~授業・指導編~

 早速、1つ目の2010~2011年の「自己負担調査」の結果から見ていこう。回答者のうち8割強は教諭が占め、その他は養護教諭、実習教諭・助手、司書教諭・司書、事務職員、現業職員が合わせて1割強、残りは未記入である(任用形態としては正規が8割を占め、臨時が1.5割、残りは未記入である)。学校種別としては、高校が半数を占め、小学校が3割、中学校が1割、特別支援学校が0.5割ほどでやや偏りがある。

 「自腹」の状況についてみていく。授業に関わる自己負担が「ある」との回答が66%を占め、その中で特に多かったのが「教材」(88%)「実験・実習の材料」(40%)である。少ないながら、「生徒が使用するもの」(18%)「問題集・ワークなど」(20%)もあった(複数回答可の設問)。

 具体的な自己負担の例についての自由記述回答を見てみると、色画用紙、シール、紙ファイルなどのいわゆる消耗品類のほか、参考文献・DVD・CDなどの教材研究のために必要と思われるもの、忘れ物をした生徒用の教材や生徒が身につけるネクタイなど児童生徒が本来個人持ちするものを教職員が持ち出しで買っているものもあった。その他、パソコンやUSBメモリ、プロジェクターや逆上がり補助具、デジカメ等、本来「学校の備品となり得るもの」も多く負担していた。これらは負担額も相当大きいはずだ。

 その他、自由記述欄からは、なぜ「自腹」をする(せざるを得ない)のか、という疑問への答えとなるような回答が見られた。「学校予算での物品を購入するには、『市の登録業者でなければならない』など様々な制限があ〔る〕」、「前年度3月までに計上した予算以外のものが購入できない」、「どこまでが自己負担なのか意識せずに買っています」、「あれもこれも欲しいと言いに行くのがつらい」、「請求しても間に合わず、お金が無いといわれ、したいことをするには自己負担するしかない」、「私たちには体操着はおろか笛一つ支給されない」、「学級費も限られている中、特別な支援を要する生徒が学ぶための教材を作るのは大変である」、「学年全部で統一されていないもの〔については自腹になる〕」、「経済状況が厳しい家庭の負担軽減のため」、「自己研修に対する負担」、「教室にかける時計は、そのクラスの担任が購入」(以上、〔〕欄は引用者補)——

 こうした声を聴くと、より良い授業を思いついて実行に移そうとしたとき、一人一人の子どもに配慮して指導を行おうとするときに。また、自治体から配賦される公費予算の予算額が少なく、あるいは学校の財務・教材整備事務が柔軟性に欠けているなどの場合に。一方で、教職員側に遠慮する気持ちが強いか、公費活用の意識がうすく、財務手続きに則り公費をうまく活用することができない場合に、やむを得ず / 自然に「自腹」を切る教職員の姿が見えてくる。

 児童生徒を対象とする授業準備や指導という、学校にとっては最も重要な職務であっても、公費による費用負担が十分ではなく、自身が使うものだけではなく子どもの使うものや学校の備品にあたるようなものまで教職員が負担しているという現状がある。思い返してみると、「授業で先生が提示した教材」、「忘れ物をしたときに先生が貸してくれたもの」、「みんなで使ったあの実験器具」は、教職員の「自腹」によって準備されていたのかもしれないのだ

(チーフアナリスト 福嶋 尚子)

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