PTA雇用職員の問題
福島県郡山市で、PTA雇用の事務補助員が学校業務に携わっていることについて、報道されている(河北新報「郡山市立中PTA問題 事務補助員が学校業務」2024年8月21日)。PTAのあり方は地域性があり、そのPTAの特殊性もあり、PTA雇用の職員が割と良くいる地域もあれば、全くいない地域もある。まず指摘しておく必要があるのは、PTAが職員を雇用することそれ自体はそのPTAが決めることであって、問題はない。PTAにかかわる事務を行うために会員の中から、あるいは外部から誰かを雇用して、事務を担ってもらうことが合理的なこともあり得るし、事務以外の活動についても経費を支払って外部に委託しているところもあり得る。PTA内部での合意があり、その雇用・労働が適法であればそのこと自体は問題がない。
しかしここで問題となっているのは、PTA雇用の職員が学校の業務に携わっているという状態である。何が問題なのか。
① 学校の業務を学校職員以外に担わせている
報じられているように、電話をとったり来校者に対応したりすることは、本来学校職員が行うべきことである。この他に、教材費やその他の保護者負担の学校徴収金を取り扱っているということも耳にする事例だが、これも本来学校職員、あるいは最近では公会計化により教育委員会が行うべきとされていることである。それを雇用契約のない任意団体雇用の職員にさせていることの法的根拠は何だろうか。委託契約を結んでいるところもあるかもしれないが、それはそれで、③の問題につながる。
ここで、PTA雇用の職員が責められる結果にしてはいけないことを指摘しておく必要がある。基本的に、学校の業務を学校職員以外に担わせている管理職に問題の責任が問われるだろうし、もしそれを把握していて管理職に対して適切な指導をしていないならば、教育行政の責任問題ともなる。
② 学校外部の人が個人情報を扱うことになる
例えば保護者からの繊細な情報を含む電話をとり、来校時の相談に対応することや、徴収金事務に携わる中で教材費や給食費の未納情報を知ることもある。そうした明らかな個人情報を守秘義務のかかっていない学校外部の任意団体雇用職員が扱うことの問題もある。さらには、そうした業務に携わっていなかったとしても、職員室や事務室などでPTA雇用職員が働いている場合、偶然に個人情報に触れてしまうリスクもある。
③ 学校職員と同様の職務を担う人の給与をPTAが負担している
郡山の事例では、月々の給与が9万円で、賞与や通勤手当も込みで年間128万4000円を一人の職員に対してPTAが支払っている例が紹介されていた。午前9時から午後2時まで職員室で勤務し、本来は学校職員が担うような職務を担当している人の給与を、PTAが負担していることになる。これは明確に、地方財政法27条の4で規定されている「市町村が住民にその負担を転嫁してはならない経費」にあたる(同法施行令52条で「市町村の職員の給与に要する経費」が規定されている)。地財法は「直接であると間接であるとを問わず」負担の転嫁を禁止しているのであって、これは「間接的」に負担を転嫁している状態で、違法状態にあたる。
蛇足ではあるが、PTA雇用の職員が学校徴収金を担ってしまい自治体雇用の事務職員がそれを扱えないとなると、PTA雇用の職員に管理職や教育行政が私費財務について研修を課すことも専門性を向上させることも促すことはできない。このことが、「隠れ教育費」温存につながる要因の一つとしても存在していることを指摘しておく。
■ 該当記事
福島・郡山市立中PTA問題 事務補助員が学校業務 教職員不在時の電話取りや来校者対応も 専門家「違法状態に当たる」 | 河北新報オンライン (kahoku.news)
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