その4・「部活動(クラブ・少年団)指導にかかわる実態調査アンケート」結果
「自己負担調査」においても部活動に関わる「自腹」については調査されているが、ここでは、より回答数が多く、実施年度が少し新しい「部活動負担調査」の方の結果を見ていこう。
回答者は、教員が93%で、その他は実習教諭、養護教諭などである(86%は正規での任用)。回答者の年齢層は青年部の調査ということで「~20代」が38%、「30代」が37%と多くなっているが、「40代」が11%、「50%」が14%であり、ベテラン層も回答している。校種としては高校が77%と多く、中学校が19%、残りが小学校、特別支援学校だ。「部活動調査」では経済的負担以外の指導負担についても問うているが、この結果については機会があれば別で報告したい。
さて、部活動における「自腹」の状況だが、まず、指導において指導者として必要なものを自己負担しているとの回答が多い。1,118件の回答の中で、「協会登録料・審判講習代・審判着など」は289件、「技術や知識を得るためのもの」は496件、「衣類(ジャージ・ユニフォームなど)」は543件、「装備・物品(ラケット・グローブなど)」は527件、「旅費・交通費(ガソリン代・高速代など)」は506件(複数回答可)であり、多くの費目でおよそ半数の教職員が自己負担をしている。これらは、本人が使うものだから、という理由もあるかもしれないが、未経験の種目の講習・研修代や物品などを負担しなければならないのは「受益者負担」原則すら通らない。
他方で、指導において子どもの活動に必要なものを自己負担しているとの回答もある。「消耗品類」は276件、「必要な備品」は147件、「公共施設などの使用料」は53件、「子供達・生徒の旅費・交通費」は79件(複数回答可)、自己負担をしている。子どもが使用するものにもかかわらず、である。これについて、「部活動指導手当以外の財政措置」が「ある」と答えたのは6%に過ぎなく、「ない」と答えたのは87%にも上る。
そして、いくらを自己負担しているのか。「部活動負担調査」では「自腹」の金額についても調査している。「ここ1年の自己負担額」としては、金額が少ない順で、「~1,000円」が11.2%、「~5,000円」が16.2%、「~10,000円」が19.8%、「それ以上」が34.7%、それ以外(18.2%)は未回答となっている(「自腹」がないのか、あるが金額が分からないのかは不明である)。1年間での自己負担額と考えると、10,000円を超えて負担をしているおよそ3分の1の回答者は、小学校での教材費の保護者負担額と同程度かそれ以外を部活動業務で自己負担していることになる。
さらに、「これまでの自己負担総額」についても「部活動負担調査」では問うている。金額が少ない順で、「~5,000円」が10.4%、「~10,000円」が8.1%、「~30,000円」が14.2%、「~50,000円」が13.1%、「~100,000円」が16.7%、「それ以上」が15.6%、それ以外(21.9%)は未回答となっている(こちらも、「自腹」がないのか、あるが金額が分からないのかは不明である)。これまでの指導者としての経歴において100,000円を超えて負担をしているおよそ6~7人に1人の回答の中には、もしやワンボックスカーや大型の△△マシンを「自腹」で購入し部活動で活用している人が含まれているのかもしれない。
部活動に関わる「自腹」が授業や指導に関わる「自腹」とは異なるのは、教職員自身の専門と必ずしも合致しておらず(40.8%)、担当が決められる際に意向が尊重されていない(24.0%)、希望していない部を任せられた(60.0%)場合もあるということだ。本来「自主的な活動」であるはずの部活動が実質的な全員顧問制で担当が任され、平日の指導時間、休日の指導時間の多くも勤務時間の割振り対象となっていない(平日90.5%、休日69.0%)。経験不足、長時間指導、児童生徒や保護者との関係構築の難しさなどの様々な指導負担に付随して、指導に見合った手当なし、「自腹」を切っての指導、という経済的負担が起こっているのである。
「改善を望むこと」として、「教員特殊勤務手当の増額」を求める回答が688件、「自己負担をなくすための予算措置」を求める回答が353件、指導に対する経済的保障を求める声が多く上がった。
以上、4回に分けて見てきたように、部活動だけではなく授業・指導や出張などでも教職員が「自腹」を切っている実態は多いことが分かった。保護者負担も同様だが、当たり前に参加すべき、実施すべき、担当すべきものとされているものが学校にはあまりに多く、そこに費用負担がついてくると、違和感をもっても、あるいは違和感をもたずに負担してしまうという構造がそこにはある。
(チーフアナリスト 福嶋 尚子)
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