給食は、学校に通う子どもたちにとって「食のセーフティネット」になっている、という考え方がある。学校関係者ならすぐに思い至るだろう。午前をずっと授業に集中できずにいる子、長期休暇明けにガリガリにやせ細って登校してくる子、給食が1日で唯一の栄養バランスのとれた食事になっている子は確かにいる。それを踏まえたうえで、慎泰俊(認定NPO法人Living in Peace代表)さんは次のように言う。
「制服もそうですが、子どもたちの格差の指標となりうるものについては、義務教育レベルでは揃えたほうがよいのではないでしょうか。こういった分野において、可能な限り、すべての人にあまねく同じものを届けるのが行政の役割だと思います」
制服の要不要を議論していると、必ずと言ってよいほど提起される意見だが、この意見の背景には「食のセーフティネット」である給食が念頭にあることが説得力を与えており、最終的にそれを「届けるのが行政の役割」という認識には賛同したい。しかし、残念ながら給食と制服とでは全く同じ議論をするのは難しい〈現状〉がある。制服について一般的に言われていることを給食との比較において整理してみよう。
〈図1〉給食と制服の共通点
〈図2〉給食と制服の相違点
このように共通点と相違点は整理できるのではないか。すると、給食はセーフティネットとして非常に機能性が高いことが分かる。だれにとっても必要で、優秀な仕組みであるとともに、その機能性からすると驚くほど低廉である。慎氏が言うように、行政が子どもたちにあまねく無償で届けるのにふさわしい。
他方で制服は、機能性がそれほど高くなく「遊び」(余白)の部分も多い(「遊び」が不要とは思わないが、一律に行政として支給することを想定した時にはこの部分は「余計」といえる)。そのうえ、学校により人により費用も異なる。他の学校指定品の存在も相まって必要性はそこまで高くない割に、細かなルールや指導が多く、制服を着られない子どもに対する強制性と権利侵害も気になる。
つまり、給食と同様に制服も行政によって支給するには、問題が多いということだ。
それでは、制服が「セーフティネット」として機能するようにするにはどうすればよいか。
◼️ 制服を本当の「セーフティネット」にするために
・子どもの権利保障の観点……他の学校指定品も併せ、子どもたちの心身の負担や快適さの観点から不要なアイテムはなくし、必要なアイテムは機能性(通気性、保温性、速乾性、吸湿性、柔軟性など)を上げる
・単価を上げる「遊び」や学校指定を外す……ワンポイント、カラーなど不要なデザイン、校章などの学校指定のデザインはなるべく外していき、大量生産することで一つ一つのアイテムの価格を下げる。既製品でも可とする
・サイズ設定……身体の成長に対応しやすいような大ざっぱなサイズ設定にし、可能なものは買い替えずとも仕立て直しで対応できるようにする
・逸脱の自由……着られない、着たくない子には着用を強制しない
・メンテナンスのための私費負担……クリーニング必須はなるべく避け、複数枚使用や洗濯負担が軽くなるような素材選び、アイテム数調整をする
以上のように、制服の機能性を上げ、より子どもたちにとって必要不可欠のものにすることで、行政が給食と同様に「すべての人にあまねく同じものを届け」ても、その制服は「セーフティネット」として機能しうるだろう。逆に言えば、この検討なしに制服を無償支給しても、多額の予算を投じる割には子どもの福祉に適うものにはならない。
だからこそ、制服は無償で支給する前に見直しが必要なのである。
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