いよいよ、中核市でも学校給食費の無償化が始まってきた。記事によれば、「無償化には年間およそ10億円の費用が必要で、小学生は1人当たり年間5万2,000円、中学生は1人当たり、年間およそ6万円、保護者の負担が軽減される」とのことで、「青森市はことし10月から半年間無償化するための費用、およそ5億円を盛り込んだ補正予算案を9月市議会に提出する」という。
学校給食費の無償化を始めとする学校にかかる費用の無償化政策は小規模自治体から始まった(たとえば、山梨県早川町は10年前から義務教育にかかる経費を町が負担=無償化している)が、町から市へ、そして中核市へと広がってきた。
学校給食費の無償化といえば、山口県和木町である。戦後まもなく実施された学校給食制度より無償化(=公費負担)を継続している唯一の自治体である。そして、最新の調査結果によれば、2017(平成29)年度の学校給食費を無償化した自治体は全国の4.7%に当たる82市町村となっている(文部科学省調査2017)。無償化している自治体は人口の少ない町や村が多いなか、兵庫県相生市(人口約3万人)は2011(平成23)年より幼稚園から中学校までの学校給食を無償化した初めての市である。また、それに続き小学校のみではあるが、2016(平成28)年より滋賀県長浜市(人口約11万人)も無償化を実現した。さらに、2020(令和02)からは、中核市として全国初となる中学校の学校給食費を無償化したのが兵庫県明石市(人口約30万人)である。それと同時に大阪府大阪市(人口約275万人:全国で2番目に多い)では「新型コロナウイルス感染症の拡大予防に向けた学校休業等を踏まえ、保護者の経済的負担軽減等の観点から、緊急的な措置として、児童生徒の学校給食費を徴収しないこと」とし、限定的ではあるが政令指定都市で小中学校の学校給食費を無償化している。また、千葉県千葉市(人口約97万人)でも2022(令和04)年の1月から「3人以上の子どもを扶養、第3子以降が市立小中学校など」を条件に無償化している。そして、中核市としては初の取組として青森市(人口約27万人)が令和4(2022)年10月から小中学校の学校給食費を無償化しようとしている。
このように、すでに自治体規模と無償化は相関関係にない。無償化の理念さえ、住民(議会)のコンセンサスが得られれば、人口の多少に関係なく学校給食費の無償化は実現可能なのである。
最後に、青森市の小野寺市長は「無償化で子育て世帯の負担軽減につなげたい」と話しているが、学校給食は学習指導要領が定める特別活動の一部である。それは、国語や美術の授業と同列に捉えられるということだ。日本国憲法が定める義務教育の無償、その射程範囲に学校給食も含まれる。自治体ごとに学校給食費の無償化が進むことは喜ばしいことではあるが、それが首長等の政策としてではなく、日本国憲法が要請する無償性の実現として全国に広まることを願って止まない。
(チーフディレクター 栁澤 靖明)
◼️ 引用参考文献(すべて最終アクセス:2022.07.24)
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