その5・「自腹が発生する理由」(消耗品や教材など)
結論からいえば「学校財務」マネジメントの問題が大きい。お金を使うことに関して教職員でどのような約束やルートが定められていて、その検証や改善が効果的に実施されているかによるところがある。
学校には必ず公費と呼ばれる予算が教育委員会より令達されている。それにもかかわらず「色画用紙、シール、紙ファイル」が買えないという予算規模なら問題の根源は自治体財政にあり、「自腹」が発生する理由は明確である。
それ以外の場合、第一の問題として「マネジメント」をあげる。おもに学校財務を担当しているのは、事務職員である。事務職員に相談をした結果「自腹」という指示があったのか──「自腹」とまではいわれないにしろ、「予算不足で買えない」という回答をされたのか、またそれについて妥当な説明があったのかという点が問題になる。また、「[事務室に]言いに行くのがつらい」([]引用者)という状況があるとしたら、それもマネジメントの問題となる。
事務職員は学校財務担当者ではあるが、学校財務を単独で担うのではなく教職員と協働して予算執行計画を考えていく必要がある(たとえば、学校財務委員会の設置)。そのマネジメントが協働的ではなく単独的になっている場合、個人の感覚で「お金が無い」が優先されてしまう──というよりもお金がなくなる心配が優先され、物品購入にブレーキをかけてしまう事例が発生するのだ。学校財務マネジメントの確立により「自腹」は減少する。
第二の問題として「制度」をあげる。たとえば、「パソコン」などは、高額であるためそもそも学校に配当されている予算の上限を超える場合もある(備品費:令達10万円など)。しかし、個人的に使用したいため購入をしたというパターンもあるだろう(本調査は10年以上前であり、「一人一台」が実現していない時代)。「自腹」には変わりないが、「よりよい」を求めた献身性によるものと捉えられる。
それに関連して「[授業で]したいことをするには自己負担するしかない」([]引用者)という回答もあるが、「したいことをする」というのもある意味単独的である。もちろんその授業による子どもの理解は深まるかもしれないが、組織的に検討した方針や教育課程において独自路線を貫くための「自腹」という可能性は排除できない。もちろん、このあたりも組織的なマネジメントに乗せて納得解を探していくべきであろう。また、「プロジェクターや逆上がり補助具、デジカメ等」という備品的なものは、購入できる時期がかぎられていることもある。それは、地方自治法上の支出負担行為権限が校長に付与されていないため、学校では自由に契約することができない。それが備品だけではなく、消耗品まで及んでいる自治体もある。このような制度は「自腹」を後押しさせる。
しかし、「市の登録業者でなければならない」という煩雑さを嫌ったり、必要なものを前日に用意したりする習慣は見直す必要がある。それは、設置者負担が原則=公費を扱う上で避けて通れない制度であり、そこは教育現場でも無視することはできない。そのため、計画性も必要であり、余裕をもった相談や発注も必要なのだ。それでも子どものためを思う教師の献身性が「自腹」を厭わなくさせるのだろう。
よりよい授業の提供──そこを否定するわけではない。しかし、公教育を担うわれわれはその制度に沿った執行とその制限のなかで最大限の効果を発揮させる努力も必要なのだ。
※授業に対して出張や部活を同様に論じることは難しい。出張旅費は条例によって定められているため、基本的には「自腹」が発生しない設計になっているが、イレギュラーへの対応が難しいことが多い。部活は昨今政策課題となっている通りそもそも教育活動としての位置づけがあいまいで、ここを公費で賄うような制度設計にはなっていない。
(チーフディレクター 栁澤 靖明)
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